すみだ北斎美術館は、4月23日(火)から6月9日(日)まで、「北斎のなりわい大図鑑」展を開催いたします。本展では、新発見の北斎の肉筆画「蛤売(はまぐりう)り図」をはじめとした、北斎一門による江戸時代の生業(なりわい)が描き出された作品を展示します。

生業とは一般的に、生活をするための仕事を意味します。生活にむすびついている仕事はその社会のありかたを映します。江戸時代には、現在ではなじみのなくなってしまった生業がある一方、現代の商売のルーツになる仕事も存在します。本展では、仕事に注目して制作された作品や、景色の中に溶け込むように描かれた働く人々の一場面を捉えた作品など、当時の人々の会話が聞こえてきそうな活気ある作品を展示します。働く人々に向けられた北斎のまなざしを通して、江戸の生業をご紹介します。

■展示構成および本展の見どころ

~1章 ものを売る生業~

本章では、棒(ぼ)手振(てふ)りや熊の膏(こう)薬(やく)売りなど、様々な販売業をテーマとします。現在では、ものを買うときはデパートやスーパーなど1か所で様々なものが購入できたり、ネットでショッピングができたり、売る方にとっても買う方にとっても便利な方法がたくさんあります。一方、江戸時代には小売り業者が市中を売ってまわる棒手振りが活躍し、流通を支えていました。現在とは異なる流通の方法や、今も昔も変わらない売買をめぐっての人々の交流にもご注目ください。

~2章 自然の恵みをいただく生業~

漁師やきこりなど自然から資源を採取する生業をご紹介します。自然を相手とする生業は、時には厳しい環境で仕事に従事しなければならないこともありますが、北斎の描く絵からは仕事のつらさなどは感じられず、その厳しい環境を大胆な構図で描きとっています。働く人々の躍動する肢体や、仕事の合間の休憩に見せるリラックスした表情など、自然の中で働く人々の姿をご鑑賞ください。

~3章 人を楽しませる生業~

本章では、歌舞伎役者や大道芸人など江戸のエンターテイナーたちが登場します。テレビなどの娯楽がない時代、パフォーマーたちは日々の暮らしに彩りを与える大切な存在だったことでしょう。現代に伝わる芸も多く、親しみのある姿も見られるかもしれません。北斎は、音曲やせりふ、観客のざわめきがきこえてきそうなほど、彼らの姿をいきいきと描きとめています。あっと驚く芸から、風雅な芸まで江戸のパフォーマンスをお楽しみください。

~4章 ものを運ぶ生業~

本章では、飛脚や駕籠(かご)かきなど輸送業に携わる人々の姿を展示します。現代では、人やものを運ぶ時には主に車、船、航空機を使い、人力でものを運ぶことは少なくなってきました。江戸時代も輸送に船を使うことはありましたが、人が自ら担いだり、馬など動物を使ったりと機械に頼ることなく運搬が行われていました。人力や、動物を使ってものを運搬することは大変ですが、息をあわせながら仕事にいそしむ人々の姿をみてとることができます。

~5章 ものを作る生業~

本章では、桶屋や絵師など、匠の姿をとりあげます。現在では3Dプリンターなども登場し、産業の機械化は加速していますが、北斎の生きた時代にはすべて手作業で物作りが行われていました。また、絵師など今はアーティストとしてとらえられているジャンルの職業も、当時は職人としての位置づけがなされていました。社会のあり方の違いにも思いを馳せながら北斎の描く江戸の職人をご覧ください。

~6章 生業いろいろ~

本章では、医者や紙屑(かみくず)買いなど、これまでの章の分類にとどまらない様々な生業のご紹介や、色々な種類の生業がまとめて描かれている作品の展示をいたします。生業からは、当時の人々の生活の知恵や暮らしぶりを想像することができます。展示をすべてご覧になった後には、浮世絵に描かれた人々の暮らしが鮮やかに想像できるようになり、これまで以上に江戸の世界に入りこむことができるかもしれません。

■開催概要

○展覧会名:「北斎のなりわい大図鑑」
○会期:2019年4月23日(火)~6月9日(日)
◎前期:4月23日(火)~5月19日(日)
◎後期:5月21日(火)~6月9日(日)
※前後期で一部展示替えを実施
※休館日:毎週月曜日
※5/7(火)、5/13(月)、5/20(月)、5/27(月)、6/3(月)休館
○主催:墨田区・すみだ北斎美術館
○お問い合わせ:すみだ北斎美術館
○観覧料:
一般1,000円<800円>、 高校生・大学生 700円<560円>
中学生300円<240円>、 65歳以上700円<560円>
障がい者300円<240円> ※< >は団体料金